A Room with a Veiw 眺めのいい部屋

備忘録や、趣味、仕事の話など

毒キノコを2回も与えるが、決して鬼嫁の話ではない。

映画 "Phantom Thread" を観ました。

中盤までは、神経症的に完璧主義な独身貴族のオートクチュール・デザイナーと、出稼ぎウェイトレスが出会って、天真爛漫だからこそこの状況を泳ぎ切れる、怖い物知らずのお嬢さんの浅はかなストーリーとして見ていた。アルマの育ちの悪さにより、生活リズムを狂わされてイライラする男。私にとってもあの朝食の場面はきついし、食事のマナーを注意すること自体もストレスだ。この状況で卑屈にならずにいられる神経ってどんなものなんだろう。

ところが物語後半は、息苦しくなるほどの二人の口論に始まり、アルマが毒キノコでレイノルドを半殺しにし、看病し、求婚させるという怒涛の展開。食中毒の病床で彼が見るのは、最愛の母の亡霊。そこへ甲斐甲斐しく看病をするアルマの姿が幻と重なるのだろうか。再び毒キノコの展開には本当に驚かされたが、なぜかハッピーエンドに。筆舌に尽くし難いラブ・ストーリーですらあったとは。毒を盛られていることに気付きながら(ヒョとして1度目の毒についても、この時気付いている?)、アルマへの愛を表現するレイノルド。私には理解できない。げに恐ろしや。だいたい毒キノコの致死量なんてわからないでしょ!?

とにかくいけすかない役柄の時のデイ=ルイスの表現力ときたら。『眺めのいい部屋』のシシルの抑えた演技も凄かったけれど、このバランスを崩しまくっている仕立て屋の演技は圧巻。