A Room with a Veiw 眺めのいい部屋

備忘録や、趣味、仕事の話など

洋上で人事を尽くして、最後の最後まで諦めない、そして諦める、そして。

映画『オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜』を観ました。

冒頭の手紙の朗読以降、基本いっさいのセリフなしなのに、こんなに集中して観ていられるのは、役者のドキュメンタリーかと思わせるほどの自然で細やかな演技と、プロットの物凄さと映像の圧倒的な力だ。とにかくすごいものを観てしまった。

試練が始まってから最初の数日は、泣き言を言ったり、悪態をつくわけでもなく破れた壁の修理などやるべきことをこなしていく主人公。落ち着いていて、時折笑顔さえかいま見える。壊れかけた無線にSOSを呼びかける以外に、悪夢のような8日間の困難のなか放たれた言葉はついポツリと独りごちた「なぜだ?」と、たった一度だけの短く鋭い悪態だけ(くそ! くそ!)。次から次へと困難が襲いかかる中、それでもできる事を粛々とやっていく。少しの希望と挫折。ほんの些細なことで運命が揺れ動く。できることはやり尽くしたと思えた最後の最後に諦め。え、諦めてしまうの? そんなにしたら救命ボート自体が燃えてしまうよ。ああ、もう諦めているの?

そして本当に諦めて海に沈んでいく。最後に見える映像は、それなのね。そして後味悪そうだけれどまあこのまま終わるんだろうな、と思ったところで、最後の最後に救いの手が。

あまりにもリアルで、すぐそこにある死(本当に文字通り、今いる海での溺死)をずっと感じながら鑑賞するため、窒息しそうな息苦しさ。

 

 

この役者の作品をもっともっと観ていたいです。もっと観ます。